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こんなの、助かった内に入りません -1-

レナ『お姉ちゃん、今どこかな?』

「もしもし・・・電車の中だけど。終電」

レナ『あ、お疲れさまぁ』

「珍しい・・・何の用?」

レナ『何か、変わったことはない?』

「レナの臭いがする」

レナ『あっ、分かる?』

「あんたが私のスマホをこっそり陰でどういじったか知らないけど・・・ここまで染みついてて分からないわけがないでしょ」

レナ『ふふふ、あぁ、お姉ちゃんはそう理解してるんだね。ま、ゴメンって言っておくかな』

「どういう意味か知らないけど、じゃあね、電話切るわ。駅まで仮眠したいの」

レナ『まぁまぁ、待って待って。重大ニュースを知らせないといけないから』

「はぁ・・・ニュースアプリ見れば済むことでしょ。電車降りてからゆっくり見させてよ」

レナ『そう言うと思ったから、重大さを教えてあげる。はむっ』

「ん・・・うぐっ!? く、くっさいっ! レナの口臭?」

レナ『何したか分かるかなぁ?』

「やっぱりキモイわあんた・・・ガラスにしみ込むまで舐め続けてたなんて」

レナ『ぷっ! くくく、すごっ! 暗示が全然解けてないんだ、口にくわえる程度じゃ。もっとやってみよーっと』

「あらっ? 雨ね、突然。急にこんな大降りだなんて。天気予報では言ってなかったのに」

レナ『れろれろ、んちゅ・・・ぷはぁ♡ ふふっ。あらあらぁ、大変だねぇ。今電車を降りたら、外は冠水してると思うよ』

「は? そんなことあるわけ・・・って、うそ」

レナ『ん~、どうしたのかなぁ』

「窓の外・・・水面しか見えない・・・」

レナ『でしょ? 放っといても1分ちょっとで乾く量だけど、どうする? 乾かす?』

「えっと、またワケ分からないことを・・・こんな大洪水、レナちゃんひとりで乾かせるものなら、やってごらんなさいよ」

レナ『言ったね。お姉ちゃんが望んだんだからやっちゃうよ。息を大きく吸って、ふーっ!!』

「きゃあっ! で、電車が急ブレーキしたの!?」

レナ『強烈な暴風だよね。あ、でもまだ徐行で走ってる。すごいなぁ、すごい健気だわ』

「私のスマホのカメラで覗き見ているだけで、そこまで分かるの・・・盗撮アプリ消さなきゃ」

レナ『へー、面白い推理! 暗示かかったままじゃそうなるんだー、普段は賢いお姉ちゃんが』

「あ、そう。盗撮なんてやってないっていうのね」

レナ『そーーだよ。察しがいいところは健在かぁ。じゃあまたヒント! 今度は当ててみせて』

「うっ、また別の臭い・・・これは、レナに耳かきやってあげた時の・・・」

レナ『もっと全然くっさいでしょ? お姉ちゃんを耳に入れちゃうとか、ちょっとジワっとくるね』

「あー、意味不明。ふぅん。読めたわ、催眠アプリというわけね。さすがに電話切るわよ。電源強制オフにすれば効果も消滅でしょ?」

レナ『いやー、そこに気づいたのはさすがだけど・・・解かない方が幸せかもよ、この催眠は』

「うるさいっ! 電源ボタン長押し!」

レナ『じゃーね。ようこそ現実へ』

「ふん。無駄に興奮したわ。ホッとしたら、瞼が重くなってきたわね。まあ、いいわ。催眠効果切れの時間、分からないし、寝ようっと・・・」

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「ん、揺れる・・・えっ? うあぁあ、何この揺れ!? めちゃくちゃ大きい、それに激しいけど・・・なんで何事もなく座ってられるの、私? 電車も、脱線してないわ? これで無事って気持ち悪い、普通じゃないわ」

レナ〈お客さん終点ですよー!!〉
「ひゃっ! そ、外? くっきり聞こえる・・・ささやき声なのに?」

レナ〈ドア開いてるよね? 早くしようよお姉ちゃん〉

「待って、待って待って。外の景色、何なの。段々畑のようにも、洗濯板を巨大化したようにも見えるし、ずっと向こうまで同じ一色だし、これって、いや、そんなわけ」

レナ〈早く出ないともっとシェイクするから〉
「ゆ、揺れるあぁ!? シェイク、って、やだ、うそよね」

レナ〈・・・それとも、こすり合わせの方がいいんだ? 指の表面のゴミ、挽き潰すように〉

「指・・・指って、指!? ひぃ・・・お、降りる、すぐ降りるから!」

レナ〈あ、降りてきたねぇ。お帰りお姉ちゃん。回送電車、出発していーよ〉

「あ・・・私の乗っていた電車、普通に動いて去っていく・・・線路の代わりが、指紋の谷の中・・・見上げたくないけど、もう、否定できない。私がいるのは駅のホームなんかじゃなくて、レナの・・・」

レナ〈肉眼で見ると、ほんとに塵くらいになっちゃったんだぁ。センサーで追跡してないと、すぐ見失いそう。助かっただけ良しとしてね〉

「な、なにが助かったよ!」(でたらめもいいとこ・・・上と下の唇を、一度に見ることもできない。怖いのもあっさり通り越すわ・・・)

レナ〈大丈夫。重力制御はしっかり続けてるから、しばらく暮らせると思うよ〉

「しばらくって・・・あんたの指の常在菌とお友達になって暮らせってこと、よね。何の恨みか、心当たりはないけど。こんなみじめな姉になっちゃって嬉しいでしょ」

(あ、急速に景色が遠ざかっていく・・・顔全体が見えるように、私がいる地面を下げてくれたのかしら)
レナ「気持ちは分かる、絶望してなくても、受け入れられるもんじゃないって。でもぉ! ほんとに助けたんだって。東京都はもう、ある国が裏で建造していた、大量縮小兵器で消えちゃったんだよ」

「消え・・・た?」

レナ「スーパーコンピューターの計算が合ってれば今頃、東京全部が二酸化炭素分子の1つくらいにされちゃってる。東京があった縮小の中心地は、地方から乗り込んだ取材班が踏み荒らしてる頃。リポーターのお姉さんの足の下・・・なんてことはないけど。はるかに巨大な花粉も簡単に舞い上がるんだから、何気なく踏み下ろすだけの風圧に飛ばされて、どこか広い空を漂ってると思うよ。生存してても、捕捉不能ってことなのよね」

「唐突すぎる・・・そんな説明されても」

レナ「お姉ちゃんと電車は完全に縮小しきる前に、ギリギリで転送が間に合ったんだぁ。ほんとよかった」

「どこでそんなこと・・・」(えっ、また急上昇!? 近いっ! 吹き抜けていく、レナの鼻息、鼻くその臭い・・・)
レナ〈どこで吹き込まれたか、って? さすがに無理があるんじゃないのぉ、こっち疑うのは。自分の小ささ自覚して、ちょっと2、3秒考えてみたら分かるよ? 理解するまで時間は少しくらいあげるけど。信じないなら・・・分からせるからね〉

「くうっ、ぞくっとする・・・本気、いえ正気なのね、昔から変わらないそのノリ。そこがウザいんだけど・・・って、鼻息が強いのよレナ! 髪型が乱れる!」

レナ〈ぷーくすくす。よく強気になれるもんだねぇ、神にも等しい庇護をしていただいてるレナ様相手に。こんな分かってないお姉ちゃんはぁ、やっぱりもう一度ぉ、おくちでいたぶりたい・・・〉

「う・・・」(やりかねないってレベルじゃない・・・逃げ込める電車ももう無いのに、直に襲われたら・・・)

レナ〈ふっふっふ、見せてあげる。私の超重量級のどちんこぉ〉
「ひえ! やめっ、じゃなくて、ええと、まず、何者なの、今のレナって?」(会話を続けないとまずい・・・ウザいほど話したがりのレナ、今はそれが頼みだわ)

レナ「え? 聞くのソレ? まいったなー声を大にして言えないのよねぇ!!!」

レナ〈あれ。お姉ちゃん?〉
「・・・た、大概にしてよ! 最大音量じゃないの!? 音波で全身砕けるかと思ったわよ、馬鹿たれ・・・」

レナ〈ご、ごめん・・・その、そうだよね。指なんかにいてもらうのは無理っぽいかも。気を緩めてすぐ近づけちゃう・・・口づけ、ぐっとこらえてるんだよ・・・〉

「うげっ・・・や、やはりただで助けたんじゃないのよね。近親相姦とかダメなこと考えてるなら、絶対禁止」

レナ〈えーっ。ふーん、そう来るかぁ・・・〉

「分かったわね? そんなことより、私を元の大きさに戻すのに、どの程度かかるかの話を・・・」
レナ〈ダメって言われちゃうと、ダメじゃないもんって返すのがマナーだょね?〉

「はっ、はあぁ? 何言ってるの~レナちゃ~ん? 本物の馬鹿?」(じゃないって! ヤバい、会話、もっと引きつける会話、ああっ全然思いつかない!)

レナ〈うわずって喚いてるのも可愛いんだぁ。こんなお姉ちゃんに何やったって、どれだけ威勢が良くったって、ちっちゃすぎて何もできない、バレやしない・・・助けた命、こんなすぐに貰っちゃう罪な私・・・〉

(お、終わったわ・・・もはや話しかけですらない、心の闇を漏らしているだけ・・・好きでもない妹の唇で、視界どころか世界の百倍を覆いつくされるのが、私の死の光景だった・・・)

‐2‐へ続く

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